2011年1月4日火曜日

書評:永遠平和のために

1985 岩波書店 カント, Immanuel Kant, 宇都宮 芳明

以前、マキャベリを読んで感動したので、マキャベリとは対極にあると思われるカントも読んだ方が良いと考えた。

お世辞にも読み易いとは言えない文章である。
傍点や括弧書き、注釈が多く、本論に加えて補説に付録まである。
しかも現実の政治や歴史の具体例に即して論を展開しておらず(この点もマキャベリとは正反対)、概念の分析が多い上にカント用語や法的概念も駆使しており難解さは否めない。
どういう読者を想定して書いたのかふと疑問に感じた。
ページ数が少ないので何とか最後まで耐えたが、正月で酒浸りで鈍った頭には少々きつかった(苦笑)。

しかし、文体上の読み難さとは裏腹に要点は、はっきりしている。
現在、お馴染みになっている国連、国際法、世界市民、公表性、常備軍の廃止(とスイスのような国民皆兵の是認)などといった諸概念も提示されている。
しかし、現実から乖離した理想論や机上の空論でも愛他主義の甘い幻想でも無い。
カント自身、問題としているのは権利であって、人間愛では無いと断言している。
それどころか、永久平和の実現の手段は人間の利己心を逆手に利用した逆説的なものである。
つまり、商業精神と自然の摂理である。
現在進行中のグローバリズムもカントの構想に沿っていると思われる。
現代の世界の動きを理解する上でもやはり必読書の一つであろう。

特に個人的に注意を引いたのは、現在物議をかもしているWikileaks海保ビデオ流出事件もあり、公表性の原理である。
これらの問題に対して読後の認識は変わるのではないか。
カントは公けの記録文書に秘密条項があるのは客観的に矛盾していると述べている。
そう指摘されて、確かに公文書が非公開なのは公文書ではなく私文書ではないかと突っ込みを入れられた思いである。
カント?らしく概念の矛盾や混同には鋭い突っ込みが入りまくっている。
糞も味噌も混同しがちな日本のマスコミもカントの爪の垢でも煎じて飲むべきだろう。

最後に、中国や日本の鎖国政策を評価していた点には意表を突かれた。

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