2016年4月24日日曜日

書評:『地政学で読む世界覇権2030』ピーター・ゼイハン

一言で言って、<主体思想>に目覚めたアメリカの米国版<神国>宣言の書。


1.ブレトンウッズ協定に始まる戦後世界秩序は、アメリカの覇権に守られた自由貿易体制だったが、

2.シェール革命と3Dプリンターの登場で経済的自立性が一層高まり(経済神秘主義の世界へと旅立つ?)、世界に対する依存度が低下した<巨大な島国>のアメリカは、

3.世界に対する関心を失い、保守引篭る(鎖国?)。という前提で予測されたシミュレーション。

4.その結果、米帝の覇権に依存した戦後自由貿易体制は崩壊し、その恩恵にどっぷり与って来た国々は、放り出され、混乱し、大打撃を受けるだろう。
あたかも、安全と食事(市場)を無償で提供してくれて来た親から、突然見捨てられた子供のように。

5.しかし、自然の地理に恵まれ、あたかも神の祝福を独り占めしているかのような神国アメリカ様だけは、大した努力も必要とせずに安全♪と繁栄♪を享受できる。
米国様のおぼえめでたい衛星国もそのお零れに少しは与れるかも知れないから、米様を怒らせるなよ。


驚くほど独善的で一国平和主義的なアメリカ天動説的な世界観で、どことなくトンデモ本のフレーバーもほのかに漂うが、鼻につく部分は鼻をつまんで我慢して読み続ける価値はある。

というのは、このような主張が出て来る社会的風潮が今のアメリカにあると思えるからである。

傲慢で独善的で無神経で粗暴で粗雑なアメリカ人が、頼まれもしないのに外国に土足で乱入して来て、異文化を理解しようともせず、上から目線で偉そうに説教したり、制裁したりして、世界の各地で星条旗が燃やされたり、反感と憎悪を買って来たが、ついに911テロを招くに至り、アメリカが出した結論は、すねて保守引篭り、世界のことは放り出して無責任を決め込むこと。のように見えなくも無い。

今、米大統領候補のトランプのネオ孤立主義的な言動が、媚米マスゴミを激しく動揺させている。

トランプは、共和党の候補だが、その外交・安保観は、共和党というより、実は現オバマ大統領@民主党の外交・安保政策に近いのではないか。

その延長線上にあると思う。

つまり、オバマをラジカルにしたのがトランプだ。

この本は、オバマの政策やトランプの主張に理論武装を提供するかも知れない。


もっとも、この本の予測が、そのまま当たるとは思えない。

米国人は、世界中に旅行したり、居住している。

多国籍企業もあるし、膨大な海外資産や利権を持つ米国が、世界で起きる事に完全に無関心でいられる訳が無い。

歴史を見ても、かつて<神国♪>を自称して破滅した<猿の惑星>もあるらしい。

米国の自信と完成が終わりの始まりとならないことを祈る。

しかし、著者はあくまでも自信満々のようである。

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